リーズナブルな価格で、依頼者の退職手続きを代行している「退職代行会社」ですが「弁護士法違反(非弁行為)に該当するのではないか?」という意見をネット上で多く見かけることが増えました。
そこで本記事では「退職代行業者は法律違反になるのか」、「退職代行業者と弁護士事務所の違い」、「弁護士付きの退職代行業者は安全なのか」について解説をしていきます。
目次
非弁行為(弁護士法違反)とは
退職代行が非弁行為(弁護士法違反)に当てはまるのかを解説する前に、非弁行為の定義について明確にしておきましょう。
以下が弁護士法大七十二条で定められている「非弁行為」です。
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
(譲り受けた権利の実行を業とすることの禁止)
要約をすると、弁護士の資格を持たない人が利益を目的に法務行為を行ってはいけないという内容です。
法務行為として代表的な行為をわかりやすく分けると、以下の7つとなります。
- 相談行為:法律に関する相談でお金をとってはいけない
- 示談行為:当事者の代わりに示談交渉してはいけない
- 債務行為:債権上の交渉をしてはいけない
- 物件行為:モノの所有、譲渡に関する交渉をしてはいけない
- 請求行為:未払いの賃金やサービス料の請求、交渉をしてはいけない
- 作成行為:法的書類の作成をしてはいけない
- 誹謗中傷対策:当事者の代わりにサイトコンテンツの削除・変更を求める交渉をしていけない
非弁行為を行った業者への罰則・利用者のリスク
非弁行為の罰則は、2年以下の懲役又は300万円以下の罰金と「弁護士法77条3号」で決まっています。
利用者に実害はありませんが、もしも利用中の退職代行業者が非弁行為とみなされてしまった場合、サービスは途中で止まってしまうでしょう。
利用者目線で見ると、連絡の最中に利用している退職代行業者が摘発されると、話が浮いたままどうすることもできなくなってしまいます。
退職代行サービスは非弁行為(弁護士法違反)になるのか?
退職代行サービスは退職代行業者が提供しているサービスは「弁護士法違反(非弁行為)」にならないため、法的問題はありません。
退職代行会社が行うことは「法務行為」ではなく「伝言」だけです。また、最終的に退職届を作成するのも依頼者本人となっています。
- 退職意思の伝達
- 本人が作成した書類の提出
- 会社の返答、利用者の返答をそのまま利用者や会社に伝える
退職代行業者は単なる使者として伝言を伝え、最終的には本人が実行をする仕組みに違法性はないという考えが一般的です。
退職代行における非弁行為
システム上、非弁行為に該当しないと説明した退職代行サービスですが、全くリスクがないわけではありません。
業歴が浅い会社の場合、オペレーションが整っておらず、誤って行き過ぎたサービスを提供してしまう可能性があります。
退職代行における非弁行為は以下の8つが代表的です。
【退職代行業者にできないこと】
- 退職日の調整を行う
- 依頼者に法的な助言を行う
- 未払い賃金の請求・交渉
- 退職金の請求
- 慰謝料の請求
- 有給休暇の交渉
- 懲戒解雇や損害賠償に対する示談
- 書類作成の代行
例えば、退職の伝達と一緒に未払い賃金の交渉をしてしまうと非弁行為とみなされてしまいます。
ただし、知名度が高く多くの方から利用されているサービスであれば、こんなにわかりきった違反をする業者はいません。提供事業者たちも一番に気をつけていることなので、うっかり非弁行為をしてしまうなんてこともまずありえません。
顧問弁護士から指導を受ける退職代行業者の業務範囲
顧問弁護士からの指導を受けていたとしても、一般業者として提供できる業務の範囲が広がるわけではありません。
顧問弁護士から指導を受ける目的は、自分達の業務を最適化するためであり、利用者のために実際に弁護士が動いてくれるわけではないためです。
顧問弁護士がいた方がより安心で非弁リスクが低いことは確かなのですが、顧問弁護士がいたとしても弁護士事務所のように、「未払い賃金」や「慰謝料」の請求を依頼することはできません。
例外として「退職代行コンシェルジュ」などのように、トラブルが起こった時に顧問契約している弁護士を利用者のために動かしてくれる業者もあります。
顧問弁護士ありの業者の特徴
- 交渉:万が一トラブルに発展してしまった場合に顧問弁護士が交渉してくれる業者もある。
- 請求:顧問弁護士がいる業者でも行なってくれない。
交渉ができない退職代行業者を利用する2つの意味
ここまで、退職代行における非弁行為と一般業者にできることの範囲を解説しました。
意外にもできることは少なく、「退職代行を利用する意味はあるのか」と疑問に思う人もいるでしょう。しかし、退職代行を利用する意味は大いにあります。
退職代行代行を利用する利点は「ほぼ100%退職できること」と「自分で一切連絡しなくていいこと」の2つでしょう。
①退職成功率はほぼ100%である
民法上、退職の申し出をした瞬間に効力が生まれるとされています。
それは、退職代行サービスによる伝言であったとしても変わりありません。
隔地者に対する意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。
さらに、退職は意思表示から2週間後にはできるという決まりがあり、申し出さえしてしまえば会社の意向を無視して一方的に2週間後に契約を切ることができます。
こちらも退職代行を利用したとしても変わりません。
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
②自分で一切連絡しなくていい
民法上、確実に退職できることは自力で退職したこと場合も同じことが言えます。
しかし、退職をする上で、話を切り出すことが一番労働者の心理的な負担となります。
「自分でも退職できるんだから退職代行を利用する意味はない」という意見は的を射ていません。労働者にとっては退職の意思を伝達してくれることに大きな意味があるのです。
退職代行は弁護士事務所に依頼すべきなのか
少しでも非弁リスクがある以上、弁護士事務所を利用するべきなのでしょうか?
当サイト編集部としては、限りなくゼロに近いと考えているため、自由に使い分けることをおすすめしています。
弁護士事務所は企業側との交渉まで行なってくれますが利用料金が高く、退職代行業者は交渉行為まではできませんが利用料金が安いです。
比較項目 | 弁護士事務所 | 退職代行業者 |
---|---|---|
退職の意思表示 | 可 | 可 |
請求 | 可 | 不可 |
交渉 | 可 | 不可 |
利用料金(相場) | 5万円 | 3万円 |
対応速度 | 予約状況次第 | 即日 |
深夜対応 | 予約状況次第 | 24時間対応 |
弁護士事務所であろうと、一般業者であろうと、退職するだけならほぼ100%できます。
会社に対して請求行為を行わない限り、価格の安い「退職代行業者」がおすすめです。
さらに詳しく退職代行業者のメリット・デメリットを解説していきます。
弁護士事務所の退職代行サービスのメリット
弁護士事務所を利用するメリットは「請求行為も行なってくれる点」と「会社側から訴えられた場合に交渉ができる点」の2つです。
弁護士事務所を利用するメリット
- 請求:未払い給与、退職金、慰謝料の請求もできる
- 交渉:損害賠償などで会社側から訴訟があっても守ってくれる
弁護士事務所に退職代行サービスを依頼すると、確実に退職ができる他「未払いの給与(残業代)」、「退職金」、「慰謝料」などを請求してもらうことができます。「賃金の問題を抱えている方」や「セクハラ・パワハラの慰謝料を求める方」は高い料金を払ってでも弁護士事務所を利用した方が、会社から得ることができる金額が増えるので、結果的にお得になるでしょう。
また、依頼者が会社から「損害賠償請求」をされたときに、弁護士事務所であれば利用者を守ることができます。会社が退職者に対して損害賠償を求めることは滅多にないことですが、「より安全に退職することを望む方」にとっては大きなメリットと言えるでしょう。
おすすめの弁護士による退職代行サービスを知りたい方は「弁護士による退職代行サービス10選!労働問題のプロが悩みを解決へ」でおすすめ弁護士事務所を10社紹介しています。
退職代行業者のサービスのメリット
退職代行業者を利用するメリットは「利用料金が安いこと」をはじめ、下記の3つがあります。
退職代行会社を利用するメリット
- 利用料金:弁護士事務所の1/3〜1/4程度
- 対応時間/速度:即日対応可能、24時間対応の業者も多い
- 請求:請求はできないが、確認してもらうことはできる
退職代行業者を利用する一番のメリットは弁護士事務所よりも、利用料金が安い点です。平均は5万円程度ですが、なかには3万円で退職代行サービスを提供している業者もあるので、利用料金を抑えたいという方におすすめです。
弁護士事務所は対応時間が限られていたり、土日祝日に営業していない場合が多いことに対して、退職代行業者は24時間365日対応をしている業者がほとんどです。一刻も早く会社をやめたいと考えの方は退職代行業者を利用するようにしましょう。
退職代行業者は、「未払い賃金」や「慰謝料」の交渉はできませんが、「本人が有給休暇と退職金の確認をしてほしいと言っている」と伝えてくれます。
ほとんどの企業は、呼びかけるだけで確認し対応してくれます。会社側がよほど依頼者の認識とずれたことを言ってこない限り弁護士の出番はありません。
他の退職代行サービスも気になる方は国内すべての退職代行サービスを網羅している「退職代行サービスおすすめランキング!【人気業者35社を徹底比較】」をぜひ参考にしてみてください。適法業者を選ぶための5つのポイント
もし、退職代行業者に依頼をする場合は、以下の点に気をつけて申込みをしましょう。
- 顧問弁護士を雇っている業者
- 交渉行為を請け負っていない、業務内容が伝達のみと明確に決まっている業者
- なりすましなどのサービスを行っていない業者
- 運営会社の情報が記載されている業者(法人が運営している)
- 公式ホームページがある業者
これらのポイントされ守っていれば、真っ当な業者を選ぶことができます。
どれも重要なポイントなので、1つでも欠けてしまってる場合は利用を控えるべきでしょう。
すべての条件を満たした業者は以下の記事で解説をしているので、合わせて読んでみてください。
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退職代行の失敗ついて気になる方は、失敗談をまとめた記事を参考にしてください。
fa-link関連リンク【退職代行で失敗例】8パターンのトラブルや問題を紹介!後悔しない業者選び
退職代行でよくある質問をQ&A形式でまとめています。疑問をお持ちの方はぜひ参考にして下さい。退職代行とは? | 値段・料金の相場 | 利用の流れ・その後 |
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